ごかいうまかっちゃん

テレビで波打ち際のむろみさんを見ていると小箱とたんのスケッチブックを読みたくなる。
読み返していると第三巻p.110の神谷さんと根岸くんの会話が気にかかった。
財布を三つ用意して有り金を三等分して持ち歩けば、
財布を落としたときのダメージが三分の一になると主張する神谷さんに対して、
財布を落とす確率は三倍になるんじゃないかと言う根岸くん。
実際はどうなるんじゃろう?

財布を落とす落とさないという事象はどう定義するのかとか細かいことはおいておく。
まあお出かけ回数に対する落とした回数の比率みたいなものでいいだろう。
根岸くんの主張は各財布についてそれを落とす確率が分ける前と後で三倍違うということでは当然なく、
三つの財布のうち少なくとも一つを落とすという確率が三倍になることを言っていると思われる。
財布であればどれであってもそれを落とす事象は独立でその確率は常に一定として、
三つ財布を持ち歩けば一つでも落としてしまう確率は三倍になりそうというのは素朴で自然な考え方ではある。
しかし、極端な話、必ず財布を落とす人はまとめて持とうが分散しようが落とす確率は同じ1で三倍にならない。
神谷さんのうっかり度次第であるが、ひどいうっかりで財布を落とす確率が三分の一より大きければ同様である。
したがって、三つに分散することで確率が三倍になるという主張は随分怪しい。

神谷さんが財布を落とす確率をpとする。
神谷さんが三つの財布のうち少なくとも一つを落とす確率は1-\left(1-p\right)^3である。
三つに分散したときに一つでも落とす確率が元の確率のr(p)倍になるとして、
とりあえずp>0の場合、
r(p)=\frac{1-\left(1-p\right)^3}{p}=3-3p+p^2
さて、0\lt p\le 1のときr'(p)=-3+2p\lt 0であるから、このpの範囲ではr(p)は単調減少である。
また、\lim_{p\to +0}r(p)=3であるので、0\lt p\le 1r(p)が3になることはない。
財布を落とす確率が限りなく0に近づくにつれて3倍に近づくが3倍にはならず常にそれより小さい。
p=0の場合、つまり財布を絶対落とさない人はどちらの持ち方でも落とす確率は0なのでやはり3倍ではない。
というか比を定められない。
根岸くん惜しい。